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「『易経』に学ぶ社長の心得 伊與田覺(論語普及会学監) 『易経』に説かれる立派な君子になるための正しい行為。 その道筋は龍が天に昇る姿に例えられ、 初九、九二、九三、九四、九五、上九の 六段階に分けて記されています。 その五段階と六段階、会社であれば社長となり、 さらに社長を退いた後の心得について。 「九五。飛龍天に在り。 大人(たいじん)を見るに利(よ)ろし」 社長ともなれば「飛龍天に在り」で、 龍が天空を自在に駆け巡るほどの実力も身についています。 しかし、お山の大将でいい気になっていてはなりません。 社長になると社外での交流も盛んになりますが、 「大人を見るに利ろし」で、 外部の優れた人物から学ぶ心掛けが必要です。 但し外だけでなく、内もしっかり見ておかなければなりません。 大きな会社になると、自分の会社の課長や係長の名前を 知らない社長も多いようですが、 普段から将来大人となるべき若手によく目を配り、 彼らの優れた意見に耳を傾けることも大切です。 ■龍は雲に乗って天に昇る 私は昭和二十八年に大学生の塾を立ち上げた頃、 中井祖門という禅僧に 深く親炙(しんしゃ)しておりました。 ある正月にご挨拶に伺うと、 床の間に中井老師の描いた龍の絵が掛かっていました。 私はその見事さに感嘆し、 ぜひとも自宅の床の間に掛けてみたい、 と無理を言って借りて帰りました。 ところが毎日眺めていると、 その元気な龍に何か危ういものを感ずるのです。 よくよく見ると、その龍には雲が描かれていませんでした。 私はそういう絵を掛けていると自分も墜ちてしまうと思い、 すぐに老師に返しに行きました。 龍は雲に乗って天に昇るものです。 会社で重役になるくらいの人は、 能力も働きも秀でているものですが、 それだけでは一国一城の主にはなれません。 人望、徳望がなければ上がることはできないのです。 聞けば老師がその絵を描いたのは四十九歳の時。 まだ元気盛りの頃だと分かり得心しました。 自分の力だけでなく、時間をかけて徳を養い、 人望によって推挽されていくのが本当の社長であり、 地位を奪い取ったような社長は長く続くものではありません。 雲が十分寄ってくるまで天に昇ってはならないのです。 |
2013.07.23 |
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