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父を助けて下さい 博多通りもん 医師からの宣告 (人という字...)
たらいの水(二宮金次郎)  中桐万里子(二宮尊徳七代目子孫・リレイト代表)

 金次郎の教えで有名な
「たらいの水の話」というのがありますね。

水を自分のほうに引き寄せようとすると
向こうへ逃げてしまうけれども、
相手にあげようと押しやれば自分のほうに戻ってくる。
だから人に譲らなければいけないと。

けれどもこの話には実は前段があるのです。

人間は皆空っぽのたらいのような状態で生まれてくる、
つまり最初は財産も能力も何も持たずに生まれてくる
というのが前段にあるのです。

そしてそのたらいに自然やたくさんの人たちが
水を満たしてくれる。

その水のありがたさに気づいた人だけが
他人にもあげたくなり、
誰かに幸せになってほしいと感じて
水を相手のほうに押しやろうとするんです。

そして幸せというのは、自分はもう要りませんと
他人に譲ってもまた戻ってくるし、
絶対に自分から離れないものだけれども、
その水を自分のものだと考えたり、
水を満たしてもらうことを当たり前と錯覚して、
足りない足りない、もっともっととかき集めようとすると、
幸せが逃げていくんだというたとえ話だと祖母から教わったんです。

それから金次郎は、偉大な思想家、経済学者、農政家と
いわれていますが、彼はやっぱり農民だった、
土と一緒に生きた人だったと凄く感じるんです。

例えば金次郎が残した道歌にこういうものがあります。

「米まけば 米の艸(くさ)はえ 米の花
 さきつゝ米の みのる世の中」

米を植えれば米が実るという
当たり前の道理を歌っているんですが、
金次郎はこの歌の米の部分を茄子や麦や芋や
あらゆるものに置き換えて歌っていて、
とてもありきたりなんですが、そのことをとても楽しんでいる。

農業という自分の仕事に力を尽くしてきた人だ
というのが伝わってくるとともに、
とても大切なことを教えられるような気がするんです。

仕事をやっていると、自分は小さなことしかできていない
という焦りや、不安に苛まれることもあります。

けれども金次郎は常に目の前の現実、
自分の一歩を大事にし、愛おしみ、
感謝しなさいと教えてくれ、
浮ついてしまいがちな自分を
地面に引き戻してくれる人だと私は感じています。
 
2013.08.10

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