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名著を読んで女子大生たちが変わった 若者の読書離れが進んでいると言われますが、 名著を読むことによって学生たちの意識は大きく変わると お茶の水女子大学名誉教授の藤原正彦氏は話されます。 (素晴らしい日本語を いかに若い世代に正しく伝えていくか。 これもこれからの大きな課題です。) (藤原) 私は女子大学で何十年と数学ばかり教えてきましたが、 国語の大切さを学生に伝えたいという思いから、 退官前の十数年間、文系、理系を問わず 全学年を対象に読書ゼミを開いてきました。 定員は20名ほどでしたが、 人気があって、いつも抽選でしたよ。 彼女たちは皆、 「日本という国は本当に恥ずかしい国だ。 戦争で近隣諸国を侵略し、 多くの人を殺し大切なものを剥奪した」 という認識を持っていました。 さらに時代を遡ると 士農工商という身分制度があって 人々は虐げられ、 自由も平等もない最悪の時代、暗黒の時代だった。 逆に言えば、いま生きている自分たちが最も自由で幸福で、 知的にもすぐれていると思っていたのです。 そんな彼女たちに私は、 日本戦没学生の手記『きけわだつみのこえ』や 新渡戸稲造の『武士道』、内村鑑三の『代表的日本人』 『余は如何にして基督教徒になりし乎』、 鈴木大拙の『日本的霊性』、 山川菊栄の『武家の女性』などを週に一冊ずつ読ませました。 すると、僅か2、3か月で彼女たちの考え方は 大きく変わるのですね。これには私が一番驚きました。 (どのように変化するのですか?) (藤原) 例えば、 「私たちほど最低な人間はいない。 戦前の人も、大正の人も、明治の人も私たちより ずっと素晴らしい人格や教養を備えていた。 そもそも自分たちは、まともなものを何も読んでいない」 「いままでいったい我われは何を習ってきたのだろう」と、 それまで自分たちが最も幸せと思っていた彼女たちが、 反対にコンプレックスを持つようになったのですね。 『武家の女性』を読むと、 江戸時代の女性が自由も平等も人権もない中であっても、 いかに幸福感を味わって生きていたかが ありありと伝わってきます。 『きけわだつみのこえ』では、 特攻隊員が出陣の前の晩に『万葉集』やニーチェを紐解き、 素晴らしい文章の手記を書き残しています。 愛する両親、妻、子供たちを置いて 突撃しなくてはいけない彼らの辛さ、 深い愛情を感じて、 多くの学生が泣きながら感想を述べていました。 洗脳教育をしたわけではありませんが(笑)、 皆、あまりに変化するのです。 そのように考えると、二十歳になっても全く遅くはないですね。 いい本を読めば、いくつになっても人間は変わります。 ゼミの全課程が終わる頃には、 難しい岩波文庫を十数冊読み終えているのですが、 「これは私の一生の宝物です」という声を 何人もの学生から耳にしました。 |
2022.07.29 |
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