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一語履歴WORD vol.676a


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『武士道』
かたよらずに生きる

臨済宗円覚寺派管長の横田南嶺さんは
「坐禅は心を空っぽにする修行である」と説かれます。

〈横田〉
自分中心なわがままな物の見方が執着を生みだし、
争いを起こし、苦しみの原因になってしまう。
そのように様々な思いや認識で頭の中が一杯になってしまう。

五祖弘忍(ごそぐにん/601~674)という禅僧は、
迷っている人の頭はゴミで一杯になった部屋のようであり、
仏の心は、ゴミがすべて片づいて
広々とした部屋のようだと譬(たと)えられた。

同じ部屋でも物にあふれて散らかっていては狭い。
現代人の多くがかかっている病は、
たくさんの物を抱え込んで狭くなったら、
なお部屋を広げれば良いと考えるところにある。

しかしそれは無理である。部屋を広くするには、
物を片づけて、不要なものを捨て去ることにある。
知識を詰めこむことばかりして、
頭が一杯になっていないだろうか。
様々な思いや感情が一杯になってあふれてはいないだろうか。

『般若心経』では、まずお互いの心を空っぽにしようと説く。
坐禅をするのは心を空っぽにする修行である。
五蘊(ごうん/色・受・想・行・識)を空っぽにする、
眼で外のものを見ない、耳で外の音を聞かないように、
好きだ嫌いだなどと判断をせず、ただ聞こえてくるに任せる。

心でもあれこれ考え事をしないようにと言うのだが、
考えるなとは難しいので、
静かに呼吸をしていることに意識を集中する。
鼻から息が出ている、
鼻から静かに入っていることだけを見つめる。
それをただ繰り返すと、だんだん心が空っぽになってくる。
 
すると、ちょうど心が恰も鏡のように澄んでくる。
鏡というのは中に映像がない、空であり、
空であるからこそ、何でも映る。
静かに坐っていると、逆に何でもきれいに心に映ってくる。

『般若心経(はんにゃしんぎょう)』は、
『大般若経』600巻の内容を凝縮したものであると言われるので、
短い経典だが、内容は簡単ではない。
それを、奈良の薬師寺の高田好胤(たかだ・こういん)和上は、
何回も何回も『般若心経』を講義されて、その心を、

「かたよらない心、こだわらない心、
 とらわれない心、ひろく、ひろく、もっとひろく、
 これが般若心経、空の心なり」

と喝破された。

2022.07.28

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