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つねに腰骨をシャンと立てる 哲学者・森信三先生は生前、立腰教育の大切さを一貫して説かれました。 (横田) 寺田一清先生にはいろんな話をうかがったのであるが、 今も一番印象に残っているのは、 寺田先生が次のように言われたことだった。 「私が森信三先生の最晩年に、 『21世紀の教育で何が一番大事ですか』とお尋ねしましたら、 森先生は即座に、『それは君、立腰教育だよ』とおっしゃいました。 私はこれを我が師・森信三の遺訓と受け止め、 白寿を迎える時まで語り続けたいと念じております」 寺田先生は、残念ながら白寿には及ばなかったものの、 94歳でお亡くなりになるまで、この「立腰」を貫かれたのだった。 「つねに腰骨をシャンと立てること これ人間に性根の入る極秘伝なり」 という一語は、実に至言と言える。 では具体的にどのようにして腰骨を立てるかというと、 森先生は、 「立腰の三要領は第一、先ず尻をウンと後ろに引き、 第二に腰骨を中心を前へウンと突き出し 、第三に軽くあごを引いて下腹にやや力をおさめる」 と示してくださっている。 私たちの坐禅においても、この腰骨を立てることは重要である。 坐禅は、自らの心を調えることを主眼としているが、 いきなり心を調えることは至難である故に、 まず身を正し、息を調えることによって、 心が調えられると説いている。 この点についても森先生は、 「心というものは見えないから、 まず見える体の上で押さえてかからねばならぬのです。 したがって正しい心を整えるには、先ずからだを正し、 次いで物を整える事から始めてゆかねばならぬわけです」 と的確に示してくださっている。 禅の書物には、「腰骨を立てる」という表現は見られないが、 「脊梁を竪起する」という言葉として見られる。 白隠禅師の言葉にも、 「それ禅定を修める者は、先ず厚く蒲団を敷いて結跏趺坐し、 寛く衣帯を繋け、脊梁を竪起し、身体をして齊整ならしむべし。 而して始め数息観を為す」 とある。 「坐禅しようと思う者は、まず厚く座布団を敷いて、 両足を股の上に乗せて坐を組み、 衣や帯を緩めて、脊梁骨を立てて、 身体をきちんと整えることだ。 そうして、自分の呼吸を数えることだ」 という意味である。 脊梁は「背骨、背筋、脊柱」のことを言う。 背骨を立てるには、腰を立てねばならない。 腰は文字通り人間の要である。 腰についての言葉もいろいろある。 「腰を入れる」とは、 「本気になる。覚悟をきめてやる」ことである(『広辞苑』)。 「腰を据える」とは「どっしり構える。おちついて事をする」ことである(同上)。 |
2021.10.28 |
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