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個性を消しているのにどうしても出てくる個性 物心つく前から面打の世界に導かれ、 37歳の若さながら、その作品が高い評価を受けている新井達矢さん。 (師匠である長澤先生にはどのようなことを学びましたか。) (新井) 長澤先生は「素直な心で彫りなさい」と、 よくおっしゃっていました。ただ、それがどういう意味なのか…… 丁寧さを大事にされた方でしたので、 おそらく、欲を出さないで真面目に彫りなさいということだったのでしょう。 それに、長澤先生は具体的に教えるというより、 見て覚えなさいという感じでした。 仕事場では資料として集めた古い能面をたくさん見せていただいたのですが、 それらを通じてよいものを見て目を養う、 感性を磨くことの大切さを教えていただきました。 技術的なことは、ある程度教えてもらえればできるようになるんですけど、 やっぱり、感性の部分は教えようにも教えられないというか、 とにかく自分でよいものを見て、自分で養っていくしかないんですね。 (本物に触れて感性を養う。 それは自分の中に「よいもの」の基準をつくるということですか。) (新井) そうですね。特に能面の場合は、 基本的には能楽のきちんとした形を守ってつくることが求められます。 ただ、私は創作面を全否定しているわけではありません。 修行のため、古面を身近にできる恵まれた機会を無駄にしないよう 古面の写しにこだわっていますが、 将来的には自分なりの創作面も挑戦したいと考えています。 (なるほど。) (新井) あと、古いものを見るということでいえば、 長澤先生はご自身の師匠に一年くらいしかつけなかったこともあって、 古い能面に学びながら自分なりに技術をつくりあげていかれたんです。 そのような姿勢はとても大事で、ただ師匠に教えられたことだけ、 真似だけをしていると、往々にして師匠の劣化コピーのような 仕事しかできなくなってしまうんですよ。 ですから、師匠に言われたことだけでなく、 常にいろんな時代につくられた古い能面や技法に学んで、 こうやったら同じものができるかな、こうしたらどうだろう と創意工夫を重ねる中から自ずと自分なりの特徴、ちょっと違うものが出てくる。 古い能面と同じものをつくろうと、 個性を消しているのにどうしても出てくる個性。 そうしたものを持っている能面が後世に残っているように思います。 |
2021.07.05 |
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