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死なんと戦えば生き、生きんと戦えば必ず死するものなり 戦国武将を題材にした講談で、寄席はもちろん、 企業の研修などでも引っ張りだこの講談師・一龍斎貞花さん。 〈一龍斎〉 織田家の猛将として名を馳せた柴田勝家、 こんな逸話を残しています。 夏の暑い盛りに勝家は、敵軍に水断ちをされ、 城内にはほとんど水がなくなってしまった。 ある時、城内の様子を探りに敵の間者がやってきて 「汗を拭わせてほしい。少し水をもらえないか」と告げた。 どうせ金盥ほどの器にわずかな水を入れて運んでくるんだろう。 間者がそう考えていると、勝家は甕に入った溢れんばかりの水を 2人掛かりで持ってこさせ、どうぞご自由に、と差し出した。 さらに使い終わった水を取っておきもせず、 「庭へ撒いておけ」と打ち水をするよう、家来に命じたんです。 ――城の窮状を悟られないようにするためですね。 〈一龍斎〉 しかしその後、蓄えの水もいよいよ残りわずかとなり、 勝家は出陣の決意をしました。 「この上は渇き死にをするか、 討ち死にするかの二つに一つ。 この水を思う存分飲み、戦に備えよ」 これで最後とばかり、家来は満足のいくまで水を飲む。 さらに、残った水を自分の馬にもやる。 「どうじゃ。思う存分、水を飲んだか。 これより討って出て斬り死にするか、 武運めでたく敵方の水を飲むか、 いずれにしてもこの甕に用はない」 勝家はそう言って甕を叩き割り、 残っていた水を全部流してしまった。後にはもう引きようがない。 「水は土に還ったぞ。我らも土に還るまでじゃ!」 そう言って敵陣に雪崩れ込んだ勝家の軍は敵方3000の大軍を見事切り崩し、 ここから「鬼柴田」「甕割り柴田」の異名が生まれたんです。 ――決死の覚悟が苦境を切りひらいたのですね。 〈一龍斎〉 はい。「死なんと戦えば生き、生きんと戦えば必ず死するものなり」―― これも謙信の残した言葉ですが、どんな状況に置かれても、 この局面を必ず打開するんだという強い志と気概を持つこと。 それが運を招くことに繋がるのだと思います。 |
2021.06.23 |
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