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「ありがとう」のひと言で十分 東京都板橋区内の薬局に、97歳のいまも立ち続ける 薬剤師の比留間榮子さん。 戦争や家族の大病、死など いろいろな試練を乗り越えてきました。 「何のために働くのか」 「何のために生きているのか」 と悩む若者たちにどう答えるのか。 (戦争に身内の不幸と、 様々な苦しみと共に人生を歩んでこられたのですね。) (比留間) 97年も生きていれば、人生いろいろなことがありますね。 人生とは様々な困難にぶつかっても、 感謝して楽しみながら突き進んでいくしかないのだと思います。 最近は、「何のために働いているのか」 「何のために生きているのか」など 悩む人が増えたと耳にしました。 それで思うのは、戦後のように皆が貧しくて、 目の前の仕事に懸命に打ち込んでいる間は、 悩む暇すらなかったということ。 悩みが生じるのは、豊かになって命の危険がなくなり、 余裕が出てきた時。 ですから本来、生きる意味というのは 深く考えるものではなく、 生まれてきたそのこと自体が奇跡的で尊いことなんですよ。 (生まれたこと自体が尊いと。 比留間さんは何か大切にしている言葉などありますか。) (比留間) もうね、そんな難しい言葉じゃなくて、 「ありがとう」のひと言で十分だと思います。 何でも人の話を真摯に、気持ちよく聞いて差し上げて、 それで終わったら「ありがとう」とひと言。 患者さんにも家族にも、 心の底から気持ちよく「ありがとう」と言えることが 大切なんだと思います。 いまでも私に会いに薬局に来てくれる方や、 私とひと言話すために用事が済んでも 待合室の椅子で待ってくださる方がいて、 本当にありがたいです。 親しき中にも感謝と礼儀あり。 この歳になると、どうしてもできないことが増え、 億劫になったり憂鬱になったりすることがあるものです。 私も歩きにくくなってから そう感じることも増えましたが、 でもそれは人間誰もが通過していくこと。 だから手伝ってもらったり、 何かしてもらったら「ありがとう」と、 感謝の言葉を忘れずに過ごしていきたいと思います。 |
2021.07.15 |
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