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指揮者は楽譜を見てはいけない 龍村仁(『地球交響曲 第九番』に挑む映画監督) 龍村仁(1940年4月生 80歳) 僕はいろいろなオーケストラで指揮をしていますが、 一人ひとりの顔をじっと見ていなくては 指揮ができないんです。 指揮者の中にはメンバーを見なくても 指揮ができるという人がいるかもしれませんが、 僕にはできません。 となると、楽譜を見ることができないわけですから、 全楽器の楽譜を全部覚えなきゃいけない。 先日もある地方の交響楽団の演奏会があったのですが、 地方ですから何となくほのぼのとした空気が漂っている。 そういう雰囲気を覆すためにも、 僕は事前にメンバーのネームリストをいただき、 楽譜をすべて覚えた上で練習に臨むんです。 演奏の途中、僕は指揮を止めることがあります。 しかし、そこで一人ひとりを注意することはしません。 そういうことをするとその人が受けるショックが 周りにも伝わって、決していい演奏にはならないからです。 ただ、止める時には全員がハッとするような、 炎になれるような、そんな言葉を発しなくてはいけません。 そして、その時、指揮者は 決して楽譜を見ちゃいけないんです。 楽譜を捲る僅か〇・一秒という時間が 彼らの意識を大きく後退させてしまうことがある。 団員の顔を見ながら 「すみません。では五百九十四小節からお願いできませんか」。 これって効くんですね。 そのようなニュアンスで僕はこの年齢になっても 「失敗しても皆が許してくれるだろう」という甘えを 一切はねのけて、まさに太平洋の真っ只中に 一人でボートを漕ぎ出しているわけです。 後戻りもできない、前に進むこともできない。 そこにはただ死が待っている。 そういう世界で生きているわけです。 |
2020.05.05 |
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