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師に足元を照らしていただき 仏師の出発点に立てた 江里 康慧(仏師) 大仏師・江里康慧さんは、師匠から「仏像を造る意識を捨てよ」 と教わったそうです。 ──師匠からは、どのようなことを 教わりましたか。 師匠の松久朋琳先生は その頃、60代でしたが、 京都を代表する大仏師とは思えないほど 本当に穏やかな人で、 厳しく叱られたという記憶はありません。 弟子としてお仕えした3年間は、 朝から晩まで ひたすら制作三昧の日々でしたが、 だからといって、彫り方をいちいち 手ほどきしてくださるわけでは ありません。 師匠の仕草や何気ない言葉を受け止めて、 自分で努力して成長するしかないのです。 こいつは人間や技がどう変わっただろうか、 と見られている厳しさと緊張感は 常にありましたね。 ──人間的な成長を 重視していらっしゃったのですか。 その頃の私は、仏教を学ぶことや 人格を磨くことなど意識することなく 生きていましたが、 そんな私に対する戒めもあったのか、 師匠は常々 「仏師は美術家であってはいけない」 とおっしゃっていました。 鎌倉時代以前の古い仏像を見て 心を揺さぶられ、惹きつけられるのは、 仏師がそれを命じた人の願いを しっかり受け止めて 形にしていったからなんですね。 技術だけに頼って 立派な仏像を造ろうと思っても 絶対に造れるものではない。 理屈では現代の技術なら 古典を超える作品が生まれても おかしくないはずなのに、 その崇高さを表現するのは 容易ではないわけです。 師匠は、 「造るという意識を捨てよ。 仏は木の中に既におわします。 仏師はその周囲にへばりついた 余分なものを取り去るだけだ」 ともおっしゃっていました。 |
2016.08.16 |
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