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髪の毛一本にも「ありがとう」 工藤 房美 村上 和雄(筑波大学名誉教授) 人の想いによってがんが完治するケースも実際に存在します。 【工藤】 抗がん剤治療は9月から11月までの 間に6回受けたのですが、 治療期間中は寝ても 覚めても痛くて苦しくて。 いつ終わるともしれない苦しみに 負けそうになりましたけど、 その間もずっと「ありがとう」 だけは言い続けました。 そのうちに髪の毛がごっそりと 抜け落ちましてね。 びっくりしてすぐにゴミ箱に 捨てようとしたんですけど、 この一本一本も私の体の 一部だったと思うとどうしても 捨てることができなくて……。 それで一本一本の髪にも 「ありがとう」とお礼を言ってから 捨てることにしたんですよ。 【村上】 髪の毛一本一本にまで。 【工藤】 髪の毛って10万本くらいある といわれているので気の遠くなる ような思いでしたけど、時には 徹夜をしてでも言い続けました。 でもそうやって続けていると、 ある時、ありがたい気持ちが 小さな雪のように心に 積もってくる感じがして、 とうとうそれが溢れ出てきたんですよ。 そうしたらとてもいい気分になって、 生きるとか死ぬとかいうことも どうでもよくなってしまったんです。 そして遂に髪の毛が一本も なくなった時のことですが、 息子が私に向かってこう言ったんです。 「お母さん、この特別な状況を 楽しまんといかんよ」って。 【村上】 それはすごい言葉だな。 【工藤】 私もびっくりしましてね。 でもよく考えたら、 それまでの私の人生の中には、 楽しむという選択肢がなかった ことに気づかされたんですよ。 ですから、それからは息子が プレゼントしてくれた 金髪のかつらを被って、 お化粧をしてお洒落もして 外に出るようにしました。 とにかく毎日を少しでも楽しもうと。 それから近くに住んでいる人が 朝日を浴びるといいよ と教えてくれたので、毎朝目覚めると、 「七十兆分の一の奇跡で きょうも生かされています。 ありがとうございます」 と言ってから、朝日を浴びに 外に飛び出していました。 【村上】 とても余命一か月の がん患者とは思えないですね。 【工藤】 そうなんですよ。 そのうちにどんどん体が軽くなって いくのに気づいたので、 翌年の2月末に病院で検査を してもらうことにしました。 そうしたら、何とがんが 跡形もなく消えていたんですよ。 |
2016.07.27 |
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