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たびだちのとき 脳性麻痺のため話すことも体を動かすことも 思うようにできない堀江菜穂子さん。 私はテレビを見ながら 「面白い」と感想を言おうとしても、 それを話すことができません。 朝起きて寒いと感じても、 それを伝えることができません。 「言いたくても言えないこと」とは、 例えばそのようなことです。 だから、詩は私にとって意思そのものなのです。 自分の詩を誰かに読んでもらおうと いうようなことは全く考えていません。 思いはすべて自分の心の中のこと。 私が詩に何か思いを込めているとするなら、 それは私の魂の解放、 苦しい自分から逃れることです。 たびだちのとき たくさんのじぶんとたたかってきた/ だいすきなじぶん/だいっきらいなじぶん/ こどもみたいなじぶん/ どれもじぶんであって じぶんではなかった/ わたしというにんげんは/ いったい どれがほんものなのだろう/ じもんじとうのまいにちだった/ いまわたしには こたえらしきものがみえてきた/ それはじかんがおしえてくれた/ いまこのときにおもうのは/ けっきょく すべてはじぶんだったのだと/ じぶんでじぶんをみとめてやったら/ ボロボロとおとをたててくずれていった/ じぶんがつくりあげていただけの じぶんじしん/ ひとりぼっちになったわたしの/ これが たびだちのとき 自分の意思を人に伝えることができない時、 あまりの苦しさに私の心は音を立てて割れました。 バラバラになった心は自分のものなのに、 思春期の私にとってそれを認めるのは とても難しいことでした。 時間が経って、その一つひとつを 認められるようになった時、 すべては自分だと気づいたのです。 |
2022.01.13 |
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