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負け続けた時間こそが武器 お笑い芸人として初の芥川賞を受賞した又吉直樹さん (齋藤) 又吉さんは太宰治を尊敬し、 太宰の自伝的エッセイ『東京八景』のオマージュとして 『東京百景』を書かれていますよね。 こんな素直なリスペクトの仕方があるのかと感動しました。 (又吉) 僕の書いた『東京百景』は 18歳で東京へ出てきてからの体験を綴ったエッセイです。 芥川は35歳、太宰は38歳で亡くなっている。 『東京百景』を書き終わったのが32歳だったので、 彼らの年齢に自分を重ねていた時期でもあります。 太宰の『東京八景』の中に、 「人間のプライドの窮極の立脚点は、 あれにも、これにも死ぬほど苦しんだ事があります、 と言い切れる自覚ではないか」 という一文があります。 この言葉に自分を何度も鼓舞してきました。 というのも、皆武器が欲しくてそれぞれの人生の中で 闘っていくと思うんですけど、 いつまで経っても武器を持てなくて負け続ける人もいる。 太宰もこの本の中で10年間、 あれもこれも失敗したと独白しています。 何もできなかったことが窮極の立脚点。 つまり、負け続けた時間をも武器にできる。 こんな強い言葉はないと思います。 (齋藤) ああ、負け続けた時間こそが武器であると。 (又吉) やっぱり負け続けた人は強いですよね。 勝ち続けている人は常に勝たなければいけないという プレッシャーも相当ありますが、負け続けている人って、 負けても死なないと分かっているから、 這いつくばってでも現状を打破しようとする強さがある。 そこがすごく腑に落ちました。 |
2021.02.01 |
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