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一番稼いでいるところで一番リスクを背負う 大西洋(三越伊勢丹ホールディングス社長) 私が社長になる可能性は九十九%なかったと思います。 武藤(前会長)が急逝したため、本人の口からは とうとう聞けませんでしたが、 思い当たることと言えば、まだ役員になる前に 新宿のメンズ館の改装を終え、 初めて武藤の海外出張に随行した後、 「ギリギリ合格かな」と言われました。 それだけですね。 ご承知のようにこの頃の百貨店業界といえば、 売り上げが十六年連続マイナスであるとか、 業界の総売上が九兆円から六兆円に下落したとか、 ネガティブな情報ばかり取り上げられがちです。 ですから私は社長に就任するとすぐに、 なぜそうなっているのか、 どう変えていけばよいのかということを真剣に考えました。 その中でまず痛感したことは、 私どもの業界がこれまでいかにリスクを負わない商売を 続けてきたかということでした。 そのために、これだけお客様に近いところで 商売をしているのに、お客様を通して 本当のマーケティングができない仕組みに 自分たちでしてしまっていること。 コストを下げるために人を減らし、 ますますマーケティングの接点が失われていること。 自分たちでリスクを負わずにお取引先にかぶせるから、 そのリスクが商品のコストになって跳ね返ってきていること。 そんなことをどこの百貨店も同じように繰り返して、 業界そのものが競争力を失っていくという 悪循環に陥っていたのです。 その悪循環から早急に抜け出すために手掛けたのが、 仕入れ構造改革でした。 マーケティングをして、ものづくりをして、 最終消費者までお届けするという 一連の流れをすべて自分たちが手掛ける。 この改革を通じて、業界平均で二%にまで 落ち込んでいる営業利益率を、 まずは五%まで引き上げていこうと考えたのです。 そのためには生産性についての考え方を 改めなければなりません。 従来は販売の生産性といって、 店頭での一人当たりの売り上げや、 一人当たりが受け持つ売り場面積といったことで 判断していました。 しかし、それでは単に人を減らせば 見た目の生産性は上がるし、 極端に言えば不動産として貸してしまうのが 一番効率がいいということになってしまいます。 しかし、我われはあくまでも百貨店として 生き残っていかなければなりません。 自力で営業利益率を五%くらいまで回復させて 百貨店の復活を図っていくために、 仕入れ構造改革を通じて 販売の質の生産性を追求していく。 これをまず新宿本店でトライしようと考えたのです。 ご承知のように新宿本店は、 売上高、入店客数ともに世界トップで、 利益の七割を稼ぐグループの本丸です。 一番稼いでいるところで 一番リスクを背負って挑戦しようと考えて、 百億円を投資して改装したのです。 私どもはこのお店を、単に数字の面だけでなく、 一人でも多くのお客様に 「この店は世界一だ」と言っていただけることが 重要だと考えたのです。 おかげさまで今年三月にグランドオープンし、 営業利益率五%を遙かに超える お店になりましたけれども、まだまだ課題はあります。 百貨店という構造自体を 今後も長く生き残っていけるような産業に していかなければならないのですが、 業界にはまだそういう意識が低く、 相変わらず狭い枠の中でパイの取り合いを 繰り返している現状に強い危機感を覚えます。 |
2013.10.08 |
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