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負けてたまるかと静かに自分に言いなさい 松平康隆(全日本バレーボール協会名誉会長) やっぱり私の一番根源的な思いは 「負けてたまるか」ですね。 これは母の教えでもあるんです。 私の母は娘盛りの16歳の時に 銭湯で細菌に感染し、一夜にして 目が見えなくなってしまいました。 その後、縁あって父と結婚し、私を産んだのが昭和5年。 ご存じでしょうけれど、その前年の昭和4年に 世界大恐慌がありました いま100年に1度の大不況といわれていますが、 こんなもんじゃない。 あの時は餓死者が出るほどの困窮の極みだったのです、 父は小さいながらも事業を営んでいましたが、 父にもしものことがあれば、 目の見えない自分と小さな息子が路頭に迷ってしまう。 あの頃は社会保障なんてない時代でしたから、 物乞いになるか、死ぬかどちらかしかないわけです。 そこで一念発起した母は、女性が仕事を持つことが 考えられない時代に骨瓶(こつがめ)を焼く会社を設立したんです。 鹿児島の女性でしたし、 強い女性だったことは確かです。 また、なんとしても生きていかなければという 気概がそうさせたのでしょう。 その母が私に繰り返し教えたことが、 「負けてたまるかと静かに自分に言いなさい」 簡単に言えば克己心ですよね。 人間はどんなに強そうに見える人にも弱い部分がある、 その弱さとはナヨナヨしているということよりも、 怠惰であったり、妥協でしたり、 みんな己に対する甘さを持っているわけです。 だから常に自分白身を叱咤激励し、 己に打ち克つことが人生では大切なことだと、 そういう実感が障害とともに生きた母にはあったのでしょう。 この「負けてたまるか」は、監督になって世界一を目指す 私にとって一番大切な言葉であり教えとなりました。 |
2013.08.31 |
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