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一歩一歩上がれば何でもないぞ 円覚寺の横田南嶺管長のお導きにより、 鈴木大拙が終の住処として晩年を過ごした 松ヶ岡文庫を初めて訪ねたのは、 昨年9月初旬のことである。 松ヶ岡文庫は北鎌倉の東慶寺境内から 130段を数える長い階段を上ったところにある。 現在は一般公開されていない。 その階段を辿りながら、 胸に湧き上がってくる言い知れぬ感慨を禁じ得なかった。 そもそもこの訪問を思い立ったのは3年前である。 大拙は外出すれば、当然130段の階段を上って帰宅する。 ある時ある人が、 「先生、90になって130の階段を上るのは大変でしょう」 と問いかけた。大拙は答えた。 「一歩一歩上がれば何でもないぞ。 一歩一歩努力すれば、 いつの間にか高いところでも上がっている」 この言葉が心に沁みた。 人生に対して平素からそういう姿勢で 向き合っている人でなければ、 こういう言葉は自然には出てこない。 大拙が上った階段を不肖も上ってみたいと思った。 |
2020.07.28 |
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