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「誕生日は、産んでくれた母に感謝をする日」 松崎運之助(夜間中学校教諭) 夜間学校に通う生徒たちに 「父」と「母」という漢字を 教えて差し上げた時のことです。 「父」は斜めに線を引っ張って 下にバッテンを書くだけだけど、 「母」は「く」と「く」のさかさまを組み合わせ、 不安定に傾いていて、中に点々まである。 父は簡単だけど母は難しいというのが 皆さんの一致した意見でした。 「先生、点々は略しちゃいけないの? 一本の線でいいじゃない」 「点々はお母さんのおっぱいを表しているから、 簡単には変えられません」 と答えると、 「ええ!? おっぱい出していいの?」 「やっぱり棒線で消したほうがいい」 と大騒ぎ。 そうこうしているうち、ある生徒さんが 「先生、悪いけど私には あれがお母さんのおっぱいには見えません」 と言い出しました。困ったなと思っていると、その方は、 「私にはお母さんの涙に見える」 とおっしゃいました。すると他の生徒たちも、 「そうだ。あれはお母さんの涙だ。 お母さんの涙は大事にしなくちゃな……」 と頷き、それぞれが苦労の多かったお母さんの話を始めました。 若い頃、母の心など知らずどれだけ反抗したか。 逆らったか。 溢れ出る涙をそのままに皆さんが語り出しました。 年が違おうと国籍が違おうと、 父がいて母がいて、今日まで多くの方々に 支えられて生きてきたことは変わらない。 それは私も同じです。 私もクラスの仲間として、皆さんに母の話をしました。 私は両親が満州から引き揚げてくる 混乱のなかで生まれました。 小さかった兄は、私が母のお腹にいる時、 逃避行を続ける最中で息絶えたといいます。 失意のどん底に叩きつけられた母は、 泣き明かした後、 「いま息づいているこの命だけは何があっても産み出そう」 と誓い、私を産んでくれたのです。 私は誕生日が来る度に、母からこの話を聞かせられました。 「あんたが生まれたのはこういうところで、 その時、小さな子どもたちがたくさん死んでいった。 その子たちはおやつも口にしたことがない、 おもちゃを手にしたこともないんだよ。 あんたはその子たちのお余りをもらって、 やっと生き延びられたんだ。 あんたの命の後ろには、 無念の思いで死んでいった人たちの たくさんの命が繋がっている。 そのことは決して忘れちゃいけないのよ」 私は生まれてこのかた、 母に誕生日プレゼントをもらったことはなかったし、 欲しいと思ったこともありません。 私にとって誕生日は、産んでくれた母に感謝をする日でした。 |
2020/06/25 |
企業の商品の広報や、元サッカー日本代表の中田英寿選手、 陸上の為末 大選手などのスポーツマネジメントを手掛け、 2012年には電通PRを抜き 業界売り上げ一位になるまで急成長したPR会社・サニーサイドアップ。 その創業者である高橋 恵さんは、 自らの半生を「無我夢中でおせっかいをばら撒いてきた」 と表現します。 70代に入って「おせっかい協会」を立ち上げ、 コロナ禍の現在も無類の〝おせっかい〟 で周囲の人々を明るく照らし続ける高橋さんの原点.。 (高橋) 私のおせっかいの原点には、子供時代の辛い経験がありました。 「何で戦死してしまったの。 手がなくても足がなくても、生きて帰ってきてほしかった!」 そう泣き叫ぶ母のそばで、 10歳の私は、姉と妹とともに、一緒に泣いていました。 良家に生まれた母でしたが、 幼くして両親を、大東亜戦争で夫を亡くしました。 戦後始めた事業もほどなく倒産。 手のひらを返したような世間の冷たさに晒され、 押しかける債権者に家財道具一切を持ち去られました。 母の指から父の形見の真珠の指輪を 強引にもぎ取る姿がいまも目に焼き付いています。 母はこの時、一家心中の瀬戸際にまで追い込まれていたのでしょう。 しかし、それを子供心に感じた時、 ガタッという物音が玄関から聞こえたかと思うと、 ガラス戸に一枚の紙切れが挟まっていました。 そこにはこう書かれていたのです。 「あなたには三つの太陽(子供)があるじゃありませんか。 今は雲の中に隠れていても、必ず光り輝く時がくるでしょう。 それまでどうかくじけないでがんばって生きて下さい」 その手紙を読み聞かせながら、母は、はっと気がついて、 ごめんね、ごめんねと謝って抱きしめてくれたのです。 おそらく私たちの窮状を見かねた近所の方だったのでしょう。 人間のちょっとした優しさに、人の命を救うほどの力がある。 この時の強烈な印象、そして一家を養うために身を粉にして働く母の姿が、 私のおせっかいの原点となったのです。 |
2020/06/24 |
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