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「自分」という存在は... 552a目的それをはっきり認識させる
一語履歴 vol.551
闘っていたのは自分一人ではない
「自分」という存在は自分以外の誰かがいて初めて成り立っている

童謡詩人の巨星と称されながら、
若くして世を去った詩人・金子みすゞ。
四半世紀の長きにわたって
みすゞの詩を世に問い続けてこられた
「かねこみすず記念館」館長・矢崎節夫さん。

いま、なぜ金子みすゞの詩が注目を集めているのかというと、
それは「自分」という存在は自分以外の誰かがいて、
初めて成り立っているという
基本的なことを思い出させてくれているからだと思います。

そのことを端的に表現しているのが、
子供たちに人気のある『私と小鳥と鈴と』という詩です。

私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面を速く走れない。

私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな唄は知らないよ。

鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

「みんなちがって、みんないい」はよく知られたフレーズですが、
その一行前には「鈴と、小鳥と、それから私」と書かれています。

ご覧いただくと分かるように、
この一文は詩のタイトルで一番最初にいた「私」を
最後に持っていきました。
「あなたがいて私がいる。あなたと私、どちらも大切」
と考えた時にはじめて、「みんなちがって、みんないい」という
言葉が生まれてくるのです。
みすゞにとっては小鳥も鈴も自分そのものであり、
優劣をつけるという考え方はありません。

それが個性尊重ばかり重視されると、
私ばかりに重点が置かれ、
「みんなちがって、みんないい」の一文が、
個人のわがままを助長することに繋がってしまうのです。

また、みすゞの詩は人間や動物にとどまらず
無機物に対しても温かな眼差しを向けています。
先ほどの詩に「鈴」が詠まれていることからも分かるように、
宇宙空間にあるもの、地球上のすべてのものは
同等の価値を持つとの考えから、命のある、
なしはまったく関係なく、どちらも尊いのです。

2021.03.29

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