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心のありようがいかに大きな人生の差異となるか 伸びる人の条件 「どういう人が伸びますか」という質問に、 職業のジャンルを越え、その道の頂点を 極めた人たちが一様に答えたのは、 「素直な人が伸びる」 というシンプルな言葉だった。 即ち、素直な人でなければ 運命を伸ばすことはできないということである。 上智大学名誉教授の渡部昇一氏と 日本将棋連盟会長の米長邦雄氏が語り合った。 渡部氏は運命を高めるための心得として、 幸田露伴の説いた「惜福」を挙げた。 自分に舞い込んできた福を使い切ってしまわず 一部をとっておく。 そういう心掛けの人に幸運の女神は微笑む、 ということである。 露伴はこの「惜福」とともに、 「分福」(自分の福を分け与える)、 「植福」(福を新たに植える)を 運命発展の三要諦と説いている。 厳しい勝負の世界を戦い抜いてこられた米長氏は、 運命を伸ばす核に心のあり方を置いているのが印象的だった。 氏は言われた。 「ねたむ、そねむ、ひがむ、うらむ、にくむ。 そういう気持ちを持っている人に運はついてこない」 それぞれの道を極めた人の言葉は、 心を高め、運命を伸ばす妙諦を簡潔に衝いて示唆に富む。 セイコーの創業者、服部金太郎の若い頃の逸話。 金太郎が奉公していた商店が破産しかかった。 すると、金太郎は自分の預金を全部、 主人の前に差し出して言ったという。 「これはお店からいただいた給金の残りですから、 自分で勝手に使ってはいけないと思い、 貯めていたものです。 それがお店のお役に立てていただけるなら、 この上の喜びはありません」 この心のありようには気高いものさえ覚える。 この気高さが金太郎の人生を 大きく発展させた礎になったことは確かである。 稲盛和夫氏が一貫して説いてこられたのも、 「心を高めない限り、経営は伸びない」 ということである。 その哲学は「才能を私物化してはならない」 という一語に顕著である。 才能は天から与えられたものだから 公のために使うべきで、 私のために使ってはならないというのである。 稲盛哲学の真骨頂である。 心をその高みに置くことで、 氏は今日の偉業を果たしたのだ。 それ境は心に随って変ず 心の垢るるときは即ち境濁る 環境・運命は心に随って変わる。 心が垢れれば、環境・運命も濁る。 弘法大師もそう言っている。 心のありようがいかに大きな人生の差異となるか。 そのことを肝に銘じ、自らの心を高め、 運命を伸ばしたいものである。 |
2020.12.19 |
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