本文へスキップ

      次代に輝く住まいを創る

TEL. 0246-65-2311

〒979-0154 福島県いわき市沼部町鹿野43

一語履歴WORD vol.646


過去の一語履歴を見ることが出来ます。

一語履歴 HOME
⇦前 一語履歴 次⇨ 
一語履歴 vol.650
節食は健康の基礎 650aその方自身の力です
一語履歴 vol.649
アジアの小国の主張が世界を動かした 649aがん細胞にも「ありがとう
一語履歴 vol.648
人間には奇跡というものは... 648a自分を変えない限り...
一語履歴 vol.647
人生は山あり谷あり 647a仕事に悩んだとき
一語履歴 vol.646
私たちは生きなければならない
一語履歴 vol.645
遊ばせてもらいました 645a私はいただくばかりの生活
一語履歴 vol.644
努力にも段位がある 644a共に語り合ったことで 644b紙屑はその国の...
一語履歴 vol.643
活力源となる名言 643a命の尊さ
一語履歴 vol.642
自国の国益に合致しない限り... 642a結局、教育がすべて
一語履歴 vol.641
自分で線を引ける
私たちは生きなければならない

2006年、53歳で末期がんを宣告された松野三枝子さんは、
東日本大震災の発生当時、後に津波で壊滅的な被害を受ける
南三陸町の病院に入院中でした。
間一髪で命を助けられ、翌日から重篤な状態にあった体を
必死に動かし炊き出しを開始。
すると3か月後の精密検査で、
全身に驚くべき変化が起きていたといいます。

(松野)
あの日のことは忘れもしません。
2週間ぶりに点滴の針を抜いてお風呂に入れることになり、
一人で浴槽に浸かっていた時でした。
14時46分、激しい揺れが襲い、
湯船の中でグルングルンと引っ掻き回されました。

私は昭和35年、小学校1年生の頃に
三陸海岸を襲ったチリ地震の津波で
3歳だった妹と祖母を亡くしています。
その経験があったため、地震が来た瞬間、
海から400メートルしか離れていない病院の3階にいた自分は
助からないと半ば諦めました。

ところが最後のダダンッという大きな揺れによって、
私はお湯と共に廊下に放り出されたのです。
たまたま看護師さんが私を見つけてくれ、
必死にバスタオルを1枚体に巻きつけ、
2人で屋上めがけて走りました。
窓から外の様子を見ると、
5メートルはあった防潮堤の上に、
真っ黒い津波が押し寄せるのが見えました。

病院は市内で比較的高い建物だったため、
近所の方も避難してきており、院内は大混雑。
何とか非常階段に辿り着き、3段目に足を掛けた時でした。
ゴゴーッという恐ろしい音と共に
ものすごい勢いの水が押し寄せてきたのです。

私は上にいた方に手を引っ張っていただき、
間一髪で水に呑まれずにすみましたが、
すぐ後ろにいた方や点滴を刺したまま階段にうずくまっていた方が、
まるでぬいぐるみのように軽々と、
一瞬にして水の中に消えていきました……。

やっとのことで屋上に辿り着いたものの、
助かったことに安堵する間もありませんでした。
目の前でどんどんと人が流され亡くなっていくのです。

ある若い男の子がガスボンベに必死にしがみついたまま
病院のすぐ横に流されてきました。
「助けてくれ!!」と大声で叫んでいるのが聞こえます。
でも、屋上から手を伸ばしても届かない。
しばらくすると濁流の中でガスボンベが垂直に立ってしまい、
重さで沈み始めました。
その男の子は叫びながら最後の最後まで
手を伸ばしてもがいていましたが、
ガスボンベと共に沈んでいきました。

その後間もなく、真っ赤な軽自動車が
内陸に向かって病院の前を流れてきました。
見ると若い女の子がハンドルを必死に掴みながら号泣している。
おそらくエンジンが故障し、
ドアも窓も開かないのでしょう。
屋上にいた人たちと、
山まで流されて木の枝に引っかからないかと祈りましたが、
引き水になった時、
その赤い車が今度は海に向かって流れていきました。

皆、助けられるものなら助け出したかったはずです。
でも何もできなかった……。
防潮堤の上まで車が流されたその瞬間、
パシャンと海に消えていきました。
屋上にはただ虚しく、
幾人もの人が「わーっ」と叫ぶ声だけが響き渡りました。

こんな若い子たちが流され死んでいく。
そんなことが許されていいはずがない。
薬漬けで末期がんの自分が
あの子たちの身代わりにならなくちゃ……。

泣いている私に、看護師長さんはぴしゃりと言いました。
「松野さん、泣いている暇はないんだよ! 
私たちは神様から生かされた。
助かった私たちは生きなければならないのよ」と。

2022.03.11

バナースペース

櫛田建設株式会社

〒979-0154
福島県いわき市沼部町鹿野43
Mail infous@kushida-web.com
TEL 0246-65-2311
FAX 0246-65-2313
定休日:土曜日・日曜日