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クリエイターに必要な三要素 早乙女哲哉(天ぷら「みかわ是山居」主人) 修業に入った老舗天ぷら屋で始終考えていたのは 「天ぷらとは一体何か」ということ。 自分のしていることを具体的に言葉で説明できなければ、 きょうは調子がよかった、悪かったという話で終わってしまい、 コンスタントな仕事ができない。 そこで先述したように、自分の行動に 「いまがベストか」と必ず問答を掛けるようにし、 少なくとも天ぷらに関しては、 どんな質問を投げかけられても 全部答えられるようになろうと誓いました。 例えば天ぷらを「揚げる」とはどういう状態を言うのか。 私の出した結論は「蒸す」と「焼く」とを 同時進行で行う、ということです。 油自体は火がつく寸前の三百六十度近くまで あげることができますが、 天ぷらの衣や魚には水分があるため、 揚げている素材は百度を超えることがありません。 揚げるというよりは、百度で「蒸して」いる状態です。 しかしそのまま油に入れておくと、 徐々に水分が抜けていき、 完全に水が抜け切ったところは、 百度から一気に二百度近い温度へと飛ぶ。 すると百度で「蒸す」のと、 二百度で「焼く」調理とが同時進行で始まるのです。 その原理を認識していれば、魚のクセを取ったり、 衣をいかにつければよいかといったことが 自分自身で把握できるようになります。 理論はよく分からないが、 油の中に入れていれば勝手に揚がるなどと思っていると、 自分から何かを仕掛けていくことなど不可能で、経験が蓄積されていきません。 詰まるところ、魚も、野菜も、 元は皆生きるために海の中にいたり、 野にあったりしたもの。 それを、料理人は食べるために 置き換える作業をしなければならない。 いま、どこの料理の世界でも、 奇をてらったようなものが大流行りですが、 果たしてそれは本当においしいと言えるのか。 お客さんに面白い料理だと喜ばれればそれでいいのか。 真のクリエイターとは、 科学者であり、数学者でもあり、 なおかつ優れた感性がなければいけない というのが私の考えです。 従ってお客さんから「おいしいですね」と言われたら、 「えぇ、そうやって揚げてます」と答えられる。 天ぷらがおいしく揚がるよう、 結果が必ずそうなるよう、 一挙手一投足、計算し尽くした中でものづくりをしている、と。 それは即ち次に来ても、 そうやって揚げられますよということであり、 この次も気を抜かずやらなければいけない、 という自分自身への戒めでもあります。 |
2013.06.17 |
両陛下の生き方から学ぶべきもの 渡邉允(前侍従長) 私が十年半お仕えしてきた中で、 両陛下の生き方から数多くのことを学ばせていただきましたが、 特にここでは二つのことを挙げたいと思います。 一つは、決して物事を蔑ろにしたり、 いい加減にしたりなさらないということです。 陛下のご公務の一つに、 閣議で決まった法律や条約の批准書などを 認証なさるという国事行為があります。 閣議が終わると内閣の事務官が 分厚い書類を入れた箱を持ってくるのですが、 陛下はそれをすべてご覧になって、 署名や捺印をされるのです。 形式的な行為と思われるかもしれませんが、 その膨大な書類一つひとつにきちんと目を通され、 分からないことがあると質問なさることもあります。 どんな小さなことであっても その一つひとつのことに時間とエネルギーを費やし、 きちんと向き合って誠実に対応される。 両陛下のその姿勢は 多くの外国人にも強い印象を与えています。 昭和六十二年、両陛下が皇太子皇太子妃の時に、 アメリカをご訪問されました。 そこで両陛下のお世話をした アメリカの儀典長が後に出版した 自身の回想録の中で、次のように書いています。 「両殿下は、レセプションではゆっくりと人々の間を歩かれて、 顔を合わせた人と表面的な挨拶ではなく 本物の会話をなさっていました。 質問をしては、その答えに実際に聴き入っておられ、 人々が群れ寄ってくるのにも気がつかれないようでした」 「ワシントンのホスピスで、 妃殿下が老人の一人ひとりに示された優しさに 心を打たれました。 実はこの時だけは仕事中に涙が出て、 止めるのに苦労しました」 常に本気で質問をなさり、本気で話を聞いておられる。 私自身、両陛下のこの姿勢には感動を禁じ得ませんでした。 もう一つは、非常に勤勉でいらっしゃるということです。 那須の御用邸にご静養に行かれても、 必ず近くの農家を見に行くとおっしゃって、 農家の人々を激励されています。 どこに行ってもぼんやり休むということは決してありません。 |
2013.06.17 |
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