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      次代に輝く住まいを創る

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一語履歴WORD vol.041a

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食の新しい流通への挑戦
       濱田正人(旬銀座贅沢倶楽部オーナー、食材探し人)

皆さんは「贅沢」というものをどうお考えでしょうか。

我が身にはそぐわないほどの豪華なものや高価なもの、
といったイメージかもしれません。

しかし、私どもの考える贅沢とは、
想像以上の満足感を得ること、
中でも最高の贅沢をつくり出すのは、
どんなお金持ちでも買うことのできない
「時間」ではないかと考えています。

手間隙をかけて作られた優れた食材を、
生産農家の顔が見える形で提供しよう――。

それが、私の経営する八百屋兼レストラン
「旬銀座贅沢倶楽部」です。

例えば当店で扱う完全無薬の「梅肉豚」は、
九州天草島の養豚家が実に二十三年もの間、
試行錯誤を繰り返し、生み出されたものです。

もともと高齢者福祉を中心に
複数の事業を展開していた私が、
この道に入ったのは九年前の五十四歳の時でした。

ある農業団体から高齢者福祉施設をつくりたい
との協力を求められ、現地調査を始めたのです。

その地域では農家の高齢化が進んでいましたが、
彼らは例外なく昼夜を問わず、懸命に働いていました。

一方、私は頻繁に農業団体などから接待を受けるのですが、
その経費が結果的に、あの農家の方たちに
ご負担を頂いているのではないかという疑問が湧き始め、
その実態に気がついた時、納得できない矛盾と
葛藤が芽生えたのです。

そして、日々努力している
小規模農家の優れた食材を世に出し、
それが正当に評価される新しい流通の仕組みを
創ることはできないかという熱い思いが込み上げてきました。

自分なりに考えて立てた仮説は、
農家と消費者を繋ぐ販売窓口自体が少ないのではないか、
ということでした。

そこで、自分が個々の農家と消費者を直接繋ぐパイプ役となり、
「少量生産少量消費」の小さな窓口をつくっていこうと
全国行脚を開始したのです。

初めは何も分からず、「道の駅」や直売所などを訪ねました。
するといつも必ず先に売れてしまう野菜や果物がある。

地元の人はどの農家の作物が
一番おいしいかを知っているからでしょう。

私はその農家を訪ね、直に生産現場を見るところから
活動をスタートさせました。

とはいえ、まったくの素人である私が
初めからうまくいくわけがありません。

農家のもとへ赴いても
「東京もんに騙されるぞ」
「先に現金を見せてくれ」
などと言われ、なかなか信頼をしてもらえないのです。

私は見た目も大事なのかもしれないと背広をやめ、
上下作業着に長靴履きという格好にし、
朝の四時や五時という時間でも呼ばれれば
田や畑へ出向き、農作業を手伝いました。

こちらが作物を仕入れてあげるのだという立ち位置ではなく、
生産者と同じ目線に立って初めて信頼が得られるのだと
考えたからです。

そうして多くの方の話を伺う中で、
実感したことがありました。

それは

「生産品の良し悪しは、生産者の人柄に比例する」

ということです。

さらに、優れた食材を作る農家には
独自の哲学とそれに至る苦労、
つまり「物語」があること、
また優れた生産者同士は他県であれ繋がっていることにも
気がつきました。

そうして粘り強く訪問していくうちに信頼関係ができ、
農家から農家へと紹介もしてもらえるようになっていったのです。

しかし農家の信頼を得ることができても、
既存の流通業界との軋轢には随分苦しみました。

現在の仕組みでは、生産者は様々でも、
作物がいったん団体などに集荷され、
箱詰めされてしまえば、
どれも同じ値段・産地として提供されてしまうのです。

つまり、手間隙をかけて作った
農家の作物とそうでないものとの区別がない。

そこを差別化し、顔の見える流通にしませんかと
提案した時には強い抵抗にも遭いました。

そうした中で平成二十二年、
個々の農家に食材を提供していただき、
それをお客様が食し、購入できる
食材のリアル情報サービス「八百屋レストラン」を
銀座にオープンさせました。

年中休みなく地方の農村を歩き回る私を
人は変わり者のように見ていましたが、
自分の作った作物を東京のレストランで
食べてくださる人がいると知った時の
生産者の弾けるような笑顔。

またお客様からこんなにおいしい野菜や果物が
あったのかと喜ばれると、探してきた甲斐があった、
もっとたくさんの人に食べてもらいたいという気持ちになり、
それが何よりの励みとなってきたのです。

苦しい時期もありましたが、
地道な取り組みが実を結び、
現在ではお客様の数も徐々に増え、
リピーター率も約六十五%という
高い数字になっています。

食の新しい流通に挑む中で見えてきたものがありました。

それはお互いに顔の見える食の流通が、
人間の信頼関係の構築に繋がっていくということです。

生産農家はあの人のためならば、
と一所懸命優れた作物を作る。

お客様はあの農家さんが作ったものだからと
少々傷んだものがあっても、彼らを信頼し作物を購入する。

手間隙はかかりますが、そこで味わえるものこそ、
食の本当の満足、贅沢だと私は思うのです。

科学技術は我われが便利に暮らす上で
大切なものかもしれません。

しかし、人間は食なしに生きてはいけません。
食はその国の文化であり、国の礎を成すものであると思います。
これからも命ある限り、農家を支援し、
日本の食を強くする活動に挑戦し続けたいと思います。
 
2013.05.27

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