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道... ご子息で相田みつを美術館館長の相田一人さん 詩人・坂村真民のご息女で坂村真民記念館館長補佐(学芸員)の西澤真美子さん。 〈相田〉 コロナ禍になって取材を受ける機会が増えまして、 「もし相田みつをがいま生きていたら どんな作品を書くのでしょうか」 と質問されることが多いんです。 その時私は正直に、 本人が亡くなっているから 分からないけれども、 もし自分が書いた作品の中で 読んでもらいたいものがあるとすれば、 一つはやはり「道」でしょうかと話しています。 五十数年前に書いた作品ではありますが、 コロナ禍のいま読んでも通じるものがあります。 「長い人生にはなあ/どんなに避けようとしても/ どうしても通らなければならぬ/ 道というものがあるんだな/ そんなときはその道を/ 黙って歩くことだな/ 愚痴や弱音を吐かないでな/ 黙って歩くんだよ/ただ黙って/ 涙なんか見せちゃダメだぜ/ そしてなあ/そのときなんだよ/ 人間としての/いのちの根が/ふかくなるのは」 〈西澤〉 本当にそう思います。 〈相田〉 それから、私自身がコロナ禍のいま伝えたいと思う 父の作品の一つは「七転八倒」です。 「つまづいたり/ころんだり/ するほうが/自然なんだな/ にんげんだもの」 これはよく「七転び八起き」と勘違いされます。 七回転んでも八回目に起き上がりなさいだと お説教になってしまいますが、 七回転んで八回倒れるというのは転びっぱなし、 倒れっぱなしなんですね。 つまり、人生はうまくいくことよりも、 うまくいかないことのほうが遥かに多い。 そこに性根を据えるまでには 随分時間がかかったと思いますが、 これは父の生き方の根底にあった 考え方だと捉えています。 父のユニークなところは、 人生うまくいかないことのほうが 多いからといって、諦めたり 投げやりになったりはしないことです。 〈西澤〉 そこが素晴らしいところですよね。 〈相田〉 うまくいかないことのほうが 圧倒的に多い人生をどう生きていけばよいかを 追求する中で、生まれた作品の一つが「受身」です。 「柔道の基本は受身/受身とはころぶ練習/ まける練習/人の前にぶざまに/ 恥をさらす稽古/受身が身につけば達人/ まけることの尊さが/わかるから」 先般、JOC(日本オリンピック委員会)会長の 柔道家 山下泰裕さんとお会いした時、 自宅にこの作品のポストカードを 飾っていますとおっしゃっていて驚きました。 オリンピックで金メダルを獲得するほどの選手でも、 受身、負ける練習を基本にしているのですね。 人生においても、転んだり負けたり 恥を曝したりそういうことを繰り返すことで、 自然と受身は体得できる。 そうすれば何度でも立ち直れる。 父は「若いうちはうんと負けろ」 と私によく言っていました。 一生勝ち続けることはあり得ないから、 若いうちは勝ち方を覚えるよりも、 負けるほうに焦点を合わせて 生きたほうがいいというのが父の考え方でした。 |
2021.09.19 |
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