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裾野 どんなに小さな役割のように思えても、 一人ひとりにはかけがえのない天命が授けられている と鈴木秀子先生は言われます。 村上和雄先生(筑波大学名誉教授)が生前、 次のような話をよくされていました。 「一人のノーベル賞受賞者の背後には、 多くの無名の研究者たちが存在しています。 富士山の頂上が朝日を浴びて光り輝く光景は、 えもいわれぬ美しさですが、 それは広大な裾野があるからこそ感じられる美しさです。 それと同様に、多くの発見や発明は、 歴史に名を留めない無数の人たちの努力の結晶なのです」 人類の歩みの中で名を留めるのは、 ごく限られた人たちです。 華々しい注目を集めるのとは反対に、 失敗続きのままこの世を去る人たちもいることでしょう。 しかし、傍目には報われない人生のように見えるとしても、 そういう人たちの地道な努力が直接的、 あるいは間接的にノーベル賞受賞者などの 人物の輩出に繋がっていることを、 村上先生の言葉は私たちに教えてくれています。 村上先生の言葉に思いを馳せている時、 三好達治(1900~1964)の一篇の短い詩が ふと頭に浮かんできました。 裾野 その生涯をもて 小鳥らは 一つの歌をうたひ暮す 単調に 美しく 疑ふ勿れ、黙す勿れ ひと日とて 与へられたこの命を― ここでいう小鳥は私たち人間に置き換えることができます。 どんなに小さく目立たないものだとしても、 私たちにはその人でなくては果たすことのできない 大切な仕事、役割が与えられています。 それは私たちの小さな思惑を超えて 天から賦与されたものであり、 一人ひとりはそれぞれの天命を全うするために この世に生を享けてきたと私は信じています。 |
2021.08.07 |
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