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役得ではなく、役損を考えろ 稲盛氏の側近として日本航空(JAL)の再建に取り組んだ太田嘉仁さんと、 稲盛氏の評伝を執筆した作家の北康利さんの対談 (北) JALの再建を批判する人に、 ではあなたならできますかと問いたいですね。 JALの再建は、いま大田さんにお話しいただいたように、 もともと優秀だった従業員の方々に、稲盛フィロソフィという、 京セラや第二電電の成功を通じて培われた一流の人生観、 仕事観を吹き込んだことによって成し遂げられたものです。 ただ公的資金をつぎ込んだり、 債権を帳消しにしただけでは決して成し得なかった。 世間の無理解の中で、 稲盛さんがJALの取締役を退任される時の 悔しさの滲む記者会見が、私は強く印象に残っています。 「こうしてうまくいくと、 それに対していろんなことを誹謗中傷する方がおられます。 せっかく這い上がってきたJALの社員を 『よくぞここまで這い上がってきた』と温かい目で見ていただくのではなく、 それを叩くようなことが行われていることを大変残念に思っています」と。 不可能と言われたJALの再建を成し遂げた稲盛さんですが、 自分を褒める言葉がほしかったわけではない。 JALの社員を褒める言葉がほしかったのですね。 私が評伝を書いた白洲次郎は、 犬丸一郎さんが帝国ホテルの社長に就任した時に、 「上に立つ人間は損をしなければならない。 役得ではなく、役損を考えろ」と言いました。 稲盛さんという方は、その言葉をまさしく体現していると思うんです。 とにかく世のため人のために行動してきた。 稲盛さんの言動はすべて「利他の心」から説明できると感じています。 |
2021.03.08 |
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