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      次代に輝く住まいを創る

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一語履歴WORD vol.476

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日本人の美徳 471a続けていくこと... 471b独創力を発揮する三条件
おっさんの手、お母さんみたいやな

余命10日の18歳の卯一という少年

〈西端〉
これはもう60年以上も前の話ですが、ある夜、
お隣の佐藤さんが一燈園の三上和志先生という立派な方が来られるというので、
子供を連れて行ったことがあります。
分かりやすく心に響くお話という意味でも、その時、
三上先生が泣きながら語られた実話を少し紹介させていただいてよろしいでしょうか。

〈坂岡〉
ぜひお聞かせください。

〈西端〉 
三上先生は警察関係の病院に招かれて入院中の人々や職員に話をされました。
院長室に戻ると、院長がお礼を述べた後に、

「実は、余命10日の18歳の卯一という少年がいます。
不幸な環境で育ったこともあり、暴言を吐き、皆に嫌われています。
しかも開放性の結核なので、一人隔離されて病室にいるのですが、
せめて先ほどのようなお話を10分でも20分でもしてやってもらえませんか」

とお願いされました。
2人は少年の部屋に入ります。
院長はマスクにガウンの完全防御、三上先生は粗末な作務衣のままです。
卯一は、院長が「気分はどうか」と声を掛けても
「うるせえ」と地の底からの声を出し相手にしようとしません。

2人が諦めて部屋を出ようとした時、卯一と三上先生の目が合うんですね。
その目は、燃えるような人恋しい、孤独のどん底にいる目でした。
先生は病気が感染することを覚悟で、卯一を一晩看病させてほしいと頼みます。

三上先生は荒れ狂っていた卯一をなだめながら、
骨と皮ばかりになった足をさすり始めました。
やがて卯一は自分が生まれる前に父親が逃げたこと、
母親は産後すぐに亡くなったこと、
神社で寝ては賽銭を盗んで食い稼ぐ生活を続けてきたことなどを話し始めるんです。
そして、一晩中足をさすり続ける先生に

「おっさんの手、お母さんみたいやな」と言うんですね。

〈坂岡〉
ああ、お母さんみたいだと。

〈西端〉
そのうちに粥を食わせてくれるよう頼みます。
生ぬるいお粥さんが梅干しと一緒に置かれている。
幾匙か口にした後、卯一は言うんです。

「もうええ。おっさんもお腹空いたやろ。俺の残り食うてくれ」と。
しかし、結核患者が口にしたものです。
先生は「一晩くらい食べなくてもいい」「そんな言わんと食うてくれ」
「いい、いい」「おっさん、食えや」「私はお腹が空いていない」……

次第に卯一の声の調子が変わっていくんですね。
「親切そうにしているけど、おまえの真心はほんまか」と。
先生は長い長い合掌をして、粥をいただかれるんです。

〈坂岡〉 
合掌をしながらも、心で葛藤しておられたのでしょうね。

〈西端〉 
「我が子であればと思おうとするけど思えない」
と先生は講演でおっしゃっていました。
卯一が「長いこと拝むんやな、おっさん」と言ったと聞いて、
私はゾクッとしました。私もその場にいれば同じだったはずですから。

粥を食べた先生に卯一は「おっさん、笑わへんか」と聞きます。
「なんや、言うてみい」「いや、笑うやろ」「笑わへん」
「それなら言うぞ。一回でいい。おっとうと呼ばせてくれ」

一回は小さい声で「おっとう」、2回目には少し大きな声で、
3回目にはありったけの声で「おっとーう!」と叫んで、
声を上げて泣き崩れたそうです。

先生も一緒に泣かれて「人間は何でこの世に生まれてくるか知っているか。
人に喜んでもらうために生まれてくるんやよ」と諭されるんですね。

そうしたら卯一が「おっさん、俺の話も聞いてくれ。
おっさんあっちこっちに講演に行くやろ? 
親を大事に思わん者が哀れな最期を遂げた、と俺の話をしてほしい」と頼みます。

2人はそこで別れるのですが、
卯一は「おっさーん」「おっさーん」といつまでも呼び続け、
その直後にお浄土に帰っていくんですね。
顔には静かに笑みを浮かべ、手は合掌していたといいます。

2020.06.12

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