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約600年前の室町時代に能を大成したといわれる世阿弥。 『風姿花伝』や『花鏡』などの著書を残し、 その言葉や教えはいまなお多くの人の心の糧になっています。 (土屋) 「初心忘るべからず」は、 一般には「はじめの志を忘れてはならない」 「初志を貫徹する」といった意味で理解されていますが、 世阿弥の言う「初心」は「初志」に限られていません。 若い時の初心、人生の時々の初心、老いて後の初心…… 世阿弥は人生の中に幾つもの初心があると言っています。 例えば、若い時の初心とは24~25歳の頃を指していますが、 この頃は若くて心身ともに充実し、 周囲に素晴らしいと認められる時期でもあります。 しかし世阿弥は認められていることが人生の壁であり、 初心なのだと言うのです。 つまり、若い頃の一時的な「時分の花」をずっと続く「誠の花」だと思い、 努力しない人間は失敗する、駄目になるのだと。 そして、中年の初心を経て直面する老後の初心とは、 いまよく言われる「何歳になっても若い時の気持ちに戻って、 いつまでも元気に頑張ろう」という意味ではありません。 老いによる様々な限界にぶつかった時に、 それに応じた自分の生き方、老いの経験をどう活かし、 人生の花を咲かせていくかを考えよと言っているのです。 もちろん現在とは寿命が異なりますが、 世阿弥は40歳を過ぎたら第一線から引いて、 後継者・後進を助けなさいとも言っています。 |
2019/08/19 |
現代の知の巨人と呼ばれた渡部昇一先生。 人生の恩師との出逢いも忘れられない。 高校時代に英語の授業を担当していただいた佐藤順太先生である。 佐藤先生は知識を愛する人という表現がぴったりな方で、 私は知らず知らずのうちに知識欲を掻き立てられ、 身を乗り出して佐藤先生の授業を聴いていた。 卒業の際、遊びに来いとお誘いいただき、 数名の同級生とご自宅に伺ったことがある。 私はそこで生まれて初めて本物の書斎を見た。 天井まで書棚があり、数々の和綴じの本や『小泉八雲全集』の初版、 イギリスの百科事典二十四巻などが収蔵されている。 とても山形県の田舎の一教師の書斎とは思えなかった。 佐藤先生は着物姿でゆったり書斎に腰を掛けながら、 いろんな話をしてくださった。 その時、私はこういう老人になりたいと強く思った。 一生の目的が定まった瞬間だったと言っても過言ではない。 まさしく佐藤先生に痺れたのである。 ただ不思議なことに、他の同級生は誰一人痺れなかった。 それどころか、後年同窓会で集まると、 「そういえばそんな先生もいたな」と言う人が大半だった。 もちろん彼らはそれぞれ他の先生の影響を受けたのだろう。 だが、同じ先生に学びながら、 全く影響を受けない者もいれば、 私のように揺るぎない影響を受けた者もいる。 受け手の求める心や感性の如何によって、 そこから学び取れる質と量は天と地ほどの差になる、 と言えるのではなかろうか。 私はあの日以来、今日に至るまでの約70年間、 佐藤先生のお姿や書斎のイメージが頭から離れたことはなく、 いまも痺れっぱなしである。 70代になって新たに家を建て、 そこに10万冊ほどの本を収めた書庫をつくり、 夢を叶えることができた。 ゆえに、若いうちに何になりたいかという強い意志を持つこと。 その願望を思い描き、頭の中で鮮明に映像化し、 信念にまで高めることが重要であると思う。 脊髄の奥で沸々と願望を燃やしていると、 天の一角からチャンスが下りてくるものである。 |
2019/08/16 |
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