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智辯和歌山高校の原点 (髙嶋) 理事長が新たに智辯和歌山高校をつくりまして、2年後の55年に転勤の辞令が出ました。 (――では、和歌山では一からチームをつくられた。) (髙嶋) 今回はホントに一からですよね。 54年には異動の内示が出ていて、理事長から「(和歌山の練習を)遠くから見ておけ」と言われていたので、月に1回くらい練習を見に来ていました。結構いい選手がいたから「これなら楽しみやな」と思っていたのですが、翌年来たらみんな辞めていた。僕の指導が厳しいと聞いて「そんなのが来たら殺されるで」と(笑)。 2、3人残っていた選手に「もう1回、呼んでこい!」と言って、15、6人が集まったかな。そこからスタートです。 (――苦心のスタートですね。) (髙嶋) とにかく大変だったですよ。僕が和歌山に来た前年の54年というのは和歌山県立箕島高校が春、夏の甲子園を連破した年なんです。一方、自分のところはキャッチボールもまともにできない。体力づくりのトレーニングをやったら、みんな10分間でへたってしまう。 いやあ、えらいところに来たな。これは甲子園に出るのに20年かかるなと思いました(笑)。 (――実際にはどれくらい?) (髙嶋) 丸6年ですか。20年かかるところをなんとか短縮しようと2つ方法を考えたんです。 一つは「教えるよりも感じさせる」ということ。このくらいのレベルの選手にいくら技術を教えても消化吸収できないだろう、それなら自分の肌で感じさせたほうが早いなと思ったんです。要は強いところとゲームをやって、こてんぱんにやられれば、何かを感じるだろうと。 ところが県内の強い高校はどこも相手をしてくれない。「智辯といったら奈良やろう。和歌山にもあるの?」という返事でね。 「覚えとけよ、何年かしてうちが強くなった時に練習試合を申し込んできても断ったるからな」という気持ちです(笑)。 それで和歌山の学校は諦めて、奈良の頃に付き合いのあった四国の学校に電話をしました。まず徳島の強豪・池田高校の蔦監督に電話をしたら「すぐに来い」と。 でも、練習試合をしたら案の定ボロ負けです。もうね、30何点とられるんですよ(笑)。 (――選手はショックでしたでしょうね。) (髙嶋) 和歌山に帰ってくるまで3時間くらいかかるんですが、何人かは途中で悔し泣きしていました。「なんで同じ高校生でこんなんなるねん?」と。その姿を見た時に、「あっ、これで甲子園は行けるな」と思いました。 ボロボロに負けて帰ってきた次の日にミーティングをしたんです。そこで「ホームランを打つにはこういうトレーニングが必要や」「速いボールを打つにはこういうトレーニングをせなあかんで」と話すと、あとは放っておいても自主的にやり始める。悔しさを覚えると自分で走り出すものなんです。するとグーンと伸びてくる。 それで1か月たった頃にまた練習試合をやると、今度は取られても10何点です。それでうちも何点か取るから差が縮まってくる。それから1か月練習してまた試合をすると、今度はいい試合になる。 2か月ほどでチームはがらっと変わりました。下手とか上手よりも、いかに心の部分が大切かということですね。 (――もう一つの方法とは?) (髙嶋) テレビ中継を利用していい選手を集めようと考えました。夏の地方大会はテレビ中継が1回戦からある。だから「なんとかベスト4に入ろう」と。すると4回テレビに映るんです。それを見て「智辯という新しくできた学校は結構やるな」と思ってくれる中学生が絶対におる、と思ったのです。 実際、和歌山大会で3年目にベスト4に入ったら、それを見た子らが翌年入学してきました。そして、その子らが上級生になった時に智辯和歌山で初めて甲子園に出るんですよ。思ったとおりでした。 (――甲子園ではすぐに勝てたのですか?) (髙嶋) それが勝てないんです。5回目までは全部1回戦負けです。5回目の時に甲子園のお客さんにこう言われたんですよ。「おお、智辯和歌山よう来たな。また負けに来たんか」と。甲子園のお客さんは厳しいですからね。 その時にハッと気づいたんです。「そうか、俺は甲子園に出る練習はしてきたけれど、甲子園で勝つ練習はしていなかったな」とね。僕の頭の中では「打倒箕島」なんですよ。箕島に勝たないと甲子園に行けないですから、そればかり考えていた。 これではいかんと思って、帰ってから試合のビデオを見直しました。そうしたら勝てるチャンスはいくらでもあるわけです。 そこからもう1回、バッテリーの強化、守備の強化をやり出して、6回目の甲子園で初めて勝ったんです。その時は2つ勝って、次に甲子園に出た時は優勝です。 (――それはすごいですね。) (髙嶋) 練習量はもともと豊富ですから、何かきっかけが必要だったのでしょうね。 |
2019/08/12 |
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