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本人の存在自体が一つの作品 岡本太郎さんについては、毀誉褒貶、 さまざまな見方がある。 天才という人もいるし、 イカサマ師のように罵倒する人もいる。 しかし、そのこと自体が 岡本太郎という表現者の本質ではないかと 私は思っている。 棺を覆ってなお評価が定まらない。 そのダイナミックな存在のしかたこそ、 岡本太郎という人の眞骨頂なのだ。 むかし渋谷にジァンジァンという 小さなホールがあった。 百人もはいれば満席というホールである。 しかし、そこはかつての熱い季節を になう舞台でもあった。 一夜、岡本太郎さんをゲストに迎えて、 ステージでディスカッションをやった。 私がキュビスムの時代のピカソより、 初期の作品のほうが好きだ、と言ったとたん、 岡本太郎さんは私を指さして大声を発した。 「だからキミは駄目なんだ!」と。 芸術は心地よいものであってはいけない、 と岡本さんは主張していた。 「芸術は爆発だ!」というのは、 有名なフレーズである。 岡本さんの著作集が刊行されたとき、 私にその一巻の解説を書くようにと依頼があった。 折悪しく私は外にいくつもの仕事を抱えていて、 とてもそれに応じる余裕がなかった。 後日、岡本さんに出くわしたときに、 岡本さんは私を指さして大声で言った。 「キミはぼくの解説を書くことを断った。 それはキミにとって生涯の恥辱になるんだぞ」 岡本さんは本気で腹を立てていたように見えた。 「キミは偉大な仕事をするチャンスを、 みずから放棄したのだ」 その非難のしかたには、一点の迷いもなかった。 岡本さんは本気でそう感じていたのだ。 岡本太郎という画家は、 その本人の存在自体が一つの作品であったように 感じられる。 描き手と作品とが一体となって 社会に対決している気配なのだ。 |
2019.09.19 |
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