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子供に対して見返りを求めない愛情 星野富弘 神様がたった一度だけ この腕を動かして下さるとしたら 母の肩をたたかせてもらおう 風に揺れる ぺんぺん草の実を見ていたら そんな日が 本当に来るような気がした (なずな) 事故で手足の自由を失うも、口に筆をくわえて 絵画や詩の創作活動を続けた詩画作家の星野富弘さん。 母がいなければ、いまの私はなかったと思うのです。 特に九年間の病院生活は母なしでは考えられません。 こんなことがありました。 食事は三度三度、口に入れてもらっていたんですが、 たまたま母の手元が震えてスプーンの汁を 私の顔にこぼしてしまったのです。 このわずかなことで積もり積もっていた 私のいらいらが爆発してしまった。 口の中のご飯粒を母の顔に向け、吐き出し、 「チクショウ。もう食わねえ、くそばばあ。 おれなんかどうなったっていいんだ、 産んでくれなけりゃよかったんだ」 とやってしまった。母は泣いていましたよ。 よほど悔しかったのか、しばらく口をききませんでした。 ところが、ハエがうるさく顔の上を飛び回り、 いくら顔を振っても離れてはすぐに私の顔にたかる。 だまりこくっていた母もたまりかね、 私の顔にたかっているハエをたたこうとしたんです。 そして、たたくというより押さえた。 ハエは逃げてしまいましたが、母のしめった手のぬくもり、 ざらついてはいましたが、柔らかな手の感触を感じたのです。 この時ですね、母親の愛を知ったのは。 母はどんなに私を憎んでいても、 私の顔につきまとうハエを見過ごすことができなかった。 母親は誰にとっても共通のものがありますね。 やっぱり母親、父親もそうだと思うんですが、 子供に対して見返りを求めない愛情があります。 だから私たちはやすらぎを感じるのではないですか。 私が入院する前の母は、昼は畑に四つんばいになって土をかきまわし、 夜は薄暗い電灯の下で金がないと泣き言をいいながら内職をしていた、 私にとってあまり魅力のない母でした。 もし私がけがをしなければ、 この愛に満ちた母に気づくことはなかったでしょう。 母を薄汚れた一人の百姓の女としてしかみられないままに、 一生を高慢な気持ちで過ごしてしまう、不幸な人間になっていたかもしれません。 |
2025.03.29 |
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