一語履歴
平澤興の生き方 那須信孝 脳神経解剖学の権威であり、京都大学総長を務めた平澤興先生。 浄土真宗本願寺派一行寺前住職の那須信孝さんは偶然の出会いから 晩年の平澤先生と交流を始め約10年にわたって師として仰がれました。 平澤先生はご自身のことを越後人特有の 「お人好し」「真面目」「辛抱強い」「正直で愚かでのろまである」 という言葉で語られていました。 もちろん、先生の言う愚かさは私たちが思う愚かさではありません。 その背後には馬鹿正直とも言えるほどの誠実さがあります。 先生の心奥には、深く広く人間を理解する心、人を愛する心が息づいていました。 印象深かったお話の一つは、先生の結婚に関する逸話です。 先生に見合いの話が舞い込んだのは23歳、京大で助手をされていた頃でした。 すると先生は相手の女性に巻紙で長文の断り状を出されるのです。 そこにはご自身の欠点を10以上書かれています。 「クソ真面目で何の面白味もない人間である」 「学問一筋の変人である」 「内気で社交性のない性格である」 「収入は少ない」 「将来の出世や名誉を考えていない」 「生活のすべてを研究に捧げる」……。 その上で「世の中には頼もしい男性が多くおられる。 何も好き好んで私のような変人と結婚する必要はない」 と認められました。 ところが、 この手紙を読んだ女性の両親が先生の人間性にいたく惚れ込んで 縁談を進め、翌年、その女性と結婚されることになるのです。 縁とは実に面白いものだと思います。 人一倍努力家で優秀な先生は講師になって僅か一年で 助教授の地位を与えられましたが、1度ならず2度までも辞退されました。 3度目の要請を受けた時、10年間講師をしている先輩の待遇を 自分よりもよくしてくれることを条件に、助教授を引き受けられるのです。 |
2025.11.03 |
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