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一語履歴WORD vol.376

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病気の原因の一つは、自分の“感謝不足”
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幸せな人生を送ってほしいとの思い
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忘れ得ぬ人
病気の原因の一つは、自分の“感謝不足”

音楽活動をしていた34歳の時に、
突然、脳梗塞を発症、言語障がい・聴覚障がい・
右手麻痺・失語症という重度障がい者になった河村武明さん。

(河村)
……2001年10月、自宅に一人でいる時に、
突然脳梗塞で倒れたのです。
発見されるまでに48時間が経過していました。
そして、搬送された病院のICU(集中治療室)から個室に移ったその日、
僕は「言語障がい・聴覚障がい・右手麻痺・失語症」
という重い後遺症が残っていることを知らされたのでした。 

まさか自分が障がい者――
言葉は何一つ喋ることができないのに声を上げて泣きました。
火がついたように泣いたのは、
大人になってから初めてのことでした。
運も神様も周りの人間からも、すべてから見捨てられたと感じ、
「34歳で自分の人生は見事に終わった。
これ以上生きていても何一ついいことはない。
僕は世界で一番不幸だ」と本気で思いました。 

それは深い絶望でした。
なぜなら、歌を歌うこと、音楽を聴くこと、ギターを弾く右手など、
脳梗塞は僕が得意だったものをわざわざ選んだかのように、
そのすべてを奪っていったからです。
本当の絶望を経験した人は「周りの景色がモノクロになる」と言いますが、
僕も本当にそうなりました。「死」が僕を強く誘っていました。

40日間の緊急入院が終わると、家族の支えを受けながら、
隣接するリハビリテーション病院で本格的なリハビリに取り組むことになりました。 
当初は「喋ることができる薬、言葉の聞き取りができる薬、
右手が動く薬があるのなら、それぞれ1億円出してでも買いたい!」などと考えていました。

しかし、次第に友達とくだらない話をしたり、ギターを弾いたり、
日常の会話やありふれた挨拶のすべてが愛おしいことだった、
発病する前の自分は、本当に幸せだったんだという思いが込み上げてきたのです。 

そしてはっと気づかされたことがあります。
それは、日常の当たり前のことがどれほどありがたいことであったか、
日常に感謝することがどれほど大事であったかということです。
病気の原因の一つは、自分の“感謝不足”にあるのだと気づかされたのです。
幸せとは手に入れるものでも、望むものでもなく、気づくものでした。 
 
2019.07.29

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