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浩然の気 栗山英樹(WBC前監督) 横田南嶺(円覚寺派管長) 今年3月に開催されたWBCで、 3大会ぶり3度目となる世界一に輝いた侍ジャパン。 大谷翔平投手×トラウト選手 決勝戦・直接対決の舞台裏 【横田】 決勝戦の最後がトラウト選手との直接対決。 あの場面をご覧になっている時の監督は、 これで抑えてくれると微塵も疑いがなかったわけですか? 【栗山】 監督の仕事っていうのは、 最悪の状況でも負けないようにすることです。 三対二と一点リードで迎えた九回表、 翔平をマウンドに上げた時、 野手も二人交代して守備固めに入りました。 「もし同点にされていたらどうしたんですか」って、 後で周りからも言われたんですけど、 僕があそこでほんの一ミリでも同点になるとか 負ける可能性を頭に描くと、 その通りになってしまうと思ったんですよ。 翔平の覚悟も感じていたので、 あの采配は絶対にこのイニングで 終わらせるというメッセージでもありました。 【横田】 両者ともメジャーリーグを代表する選手ですから、 おそらく技術の差はほとんどないと思うんです。 でも、監督もお読みになっている 『孟子』に、「浩然の気」という言葉が出てきますね。 これは大河が滔々と流れていくような、 この上なく強く大きく真っ直ぐな気のこと。 大谷選手の浩然の気が相手バッターを 圧倒していったんじゃないかと感じました。 それから、準決勝のメキシコ戦で 九回裏に劇的な逆転勝利を呼んだのも、 先頭で彼がヒットを打ち、 ヘルメットを投げ捨てて全力疾走し、 二塁まで到達してベンチに向かって叫びましたよね。 あれで気の流れが変わって、 こちらに引き寄せたと思うんです。 【栗山】 普通の選手はああいう追い込まれた状況に直面すると、 プラスとマイナスのイメージが どちらも頭の中に浮かぶはずです。 ただ、翔平の場合、「もしダメだったら」 というマイナス思考が浮かんでいるようには見えない。 プラスになるんだって百%信じて行動する。 ちょっと無理かなと思うようなことを僕らが要求すると、 彼はすごく嬉しそうな顔をしてやってくれます。 要するに、自分ができないと思われることにチャレンジすると、 達成できてもできなくても自分のレベルが引き上がる、 能力が高まるということを知っているんじゃないでしょうか。 【横田】 決してマイナスには捉えないわけですね。 【栗山】 はい。「ええ?」って否定的な態度を取ることは全くありません。 「面白そうですね。行っちゃいますか!」 みたいな雰囲気をいつも出しています。 |
2023.09.16 |
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