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      次代に輝く住まいを創る

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一語履歴WORD vol.086

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一語履歴 vol.090
プロは絶対に... 090aノーベル賞を... 090b未来を担う... 090c之を愛し...
一語履歴 vol.089
落語の道に 089a人生の大原則 089b83歳の女子高生 089c人生の根本は...
一語履歴 vol.088
幸せは... 088a腕を 088b西郷南洲の 088c決める... 088d坂村真民と...
一語履歴 vol.087
点から... 087aなまえ... 087b誰よりも... 087c体温だけで...
一語履歴 vol.086
俳優に... 086a恩に... 086b怒らない...~宿命は... 086c人生の金メダル...
一語履歴 vol.085
母からの... 085aできる方法... 085b中村天風... 085c生活のあらゆる...
一語履歴 vol.084
仁を... 084a杉山龍丸... 084b全力を... 084c苦労と... 084d勝利の神様...
一語履歴 vol.083
花を咲かせる... 083a実感を... 083bトップに... 083c極限を生き抜く...
一語履歴 vol.082
人生と... 082a苦しみに... 082b全部努力... 082c点々... 082d新しい...
一語履歴 vol.081
私たちは... 081a種をまく... 081b偉人を... 081c売ろうとしたら...
俳優になるんだったら一流を目指せ
            大地康雄(俳優)

和製ジャック・ニコルソンの 異名を取る俳優・大地康雄氏。

その圧倒的な演技力で 多くのドラマや映画に出演し、
日本アカデミー賞助演男優賞など 数々の賞にも輝いています。

35歳の時、映画『マルサの女』でブレイクを果たしますが、
それまでの十数年間は 売れない苦悩の時代を過ごしたといいます。

劇団に入ってからは、
俳優修業とアルバイトの
二重生活が延々と続いた。

当然、田舎者の私にコネなどない。
30か所以上の芸能プロダクションを
飛び込みで回ったが、悉く惨敗。

そんな時、友人からガラス磨きの
アルバイトを紹介してもらった。

得意先探しで田園調布や成城といった
高級住宅街を一日50軒近く訪問しても、
断られる日々。

だが、あの時は俳優という目標に向かって
まさに無我夢中だった。

一分一秒無駄にしまいと、
夏場の炎天下で汗が噴き出していても、
次の家に向かう時は常に走っていた。

ガラス磨きをしながら、
大声で発声練習をしたり、
台詞を覚えたりと、
ご迷惑もかけた。

だが、そのひたむきさを
見ていてくれた人もいたのだろうか、
徐々にお得意先は増えていった。

そんな生活が続く中、
五反田近辺を歩いていると、
ある表札が私の目に飛び込んできた。

「伊藤雄之助」

黒澤明監督作品に数多く出演していた
名優・伊藤雄之助の自宅を
偶然見つけたのである。

私はすぐに弟子入りを懇願したが、

「うちはもう弟子を取らないことに
 しているから諦めなさい」

と奥様に一蹴された。

なぜかと尋ねると、
過去に何人か取ったけれども、
その厳しさに耐え切れず
皆辞めていったのだという。

その言葉に、むしろ私は燃え立った。

それから何度も自宅に通い詰め、
ガラス磨きをしながらチャンスを窺っていた。

そして8回目の訪問、
遂にその時は来た。

いつも通りガラス磨きをしていると、
伊藤先生が奥から出ていらした。

「君はしつこく来ているらしいけど、
 誰かの紹介か?」

「いえ、違います。
 僕は石垣島から出てきて、
 俳優になりたくてもコネがないもんですから、
 こうしてお邪魔させてもらっています」

すると先生は私の目をじっとご覧になって、
こうおっしゃった。

「明日から来てみるか」

私の諦め切れない執念が
先生に伝わったのだろう。

こうして1974年、
22歳の時に弟子入りを果たした。

心の中で「やったあ!」と叫びながら、
桜並木の坂道をジャンプして
帰路についたことをいまも鮮明に記憶している。

翌日からは厳しい修業生活が始まった。

最初は右も左も分からず、
叱られてばかり。

ある日、稽古の休憩中に、
台本を跨いでトイレに行ったことがある。

すると、間髪を容れず先生の檄が飛んだ。

「バカ野郎! 台本を跨ぐとは何事だ。
 俺たち役者はこれで飯を食わせてもらってる。
 そんな礼儀のかけらもないやつが
 役者になんかなれるか。ふざけるな!」

そういう人としての基本から
徹底的に叩き込まれた。

また、早く有名になって稼ぎたいという
私の野心を見抜かれたのだろう。

入門数か月後に、こんな言葉を
掛けてくださったことがある。

「おまえ、俳優になるんだったら一流を目指せ。
 その覚悟がなければ明日から来なくていい」

私が意味を取りかねると、さらに続けた。

「要するに人間の弱さ、愚かさ、 悲しさ、醜さを
 全部表現できるのが一流の俳優だ。
 そういう本物の俳優になって初めて、
 地位や名誉、金は自然についてくる。
 順番を間違えるな!」

頭を殴られたかのような衝撃だった。

それから私は本物の演技とは何か、
どうすればそういう演技ができるのかを
常に考えながら、
先生の演技を観察・研究し、訓練を続けた。
 
2014.02.06

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